富士山周辺の被害

 富士山が噴火したら、どんな被害があるのか。まずは富士山周辺の被害から考えていきましょう。
 富士山噴火がどんなタイプのものであれ、まずはどこから噴火するのか、そしてそのときにどんな風向きでどんな天気なのかによっても被害が異なります。
まずは、溶岩が流れるタイプの噴火が起きた場合です。溶岩流が発生した場合、もちろん溶岩が到達する前に非難しなければいけません。ただ、仮に溶岩タイプの噴火が起こったとしても、噴火口とは反対側にある村や町、市では直接溶岩による被害が起こる可能性はほとんどないと考えられますし、噴火口の位置は富士山の山頂、北西から南東に火口ができる可能性が高いといわれていています。富士吉田市方向に火口ができて、溶岩が流れ出した場合、吉田市の住宅街に溶岩が到達するまでは1日近くかかると予想されていますし、富士河口湖町方向に火口ができた場合、国道139号線に溶岩が到達するのは10時間程度で、鳴沢村は火口そのものができる危険もある場所になります。
そして、最も怖いといわれているのが、宝永大噴火のような火山灰が大量に出てくるタイプの噴火です。実は、宝永大噴火のような大規模な火砕流が発生すると、富士山の半径10キロにいる人は、噴火してからでは避難が間に合わないといわれています。溶岩は、それほど早いスピードではないので、ルートさえ確保できれば走って逃げることも可能です。ですが、火砕流は時速100キロ程度あると考えられ、車で逃げても間に合わないのです。熱せられた噴石に当たれば、もちろん死亡する危険もありますし、火災の原因になることもあります。
また、実は富士山噴火では土石流による被害も想定されています。土石流のスピードは、もちろん溶岩のスピードとは比較にならないほど早いものです。噴火時に雨が降っていて、火山灰タイプの噴火があった場合、通常の土石流よりも発生の危険が高まります。火山灰は水分を含みやすく、一気に重くなってしまうからです。土石流というと、豪雨によって発生するようなイメージですが、火山灰の場合、特に強いとは感じないような雨でも十分に土石流の危険があるのです。また、この危険は雨が降っているときだけでなく、雪の上に灰が積もった場合も同じです。冬であれば雪の量も多く、火砕流が雪を溶かして富士山から大量の土石流が流れ出す可能性もあります。また、山体崩壊とセットで派生する土石流という可能性もあります。紀元前500〜800年頃に発生したと考えられている御殿場岩なだれの際には、御殿場の陸上自衛隊駒門駐とん地では40メートルもの厚みに達する土砂が流れ込んでいますし、御殿場駅の辺りでも、厚みが10メートになるほどの土砂が流れ込んでいます。
もちろん、富士山周辺に住んでいる人たちは、日ごろからハザードマップなどで自分の住んでいる地域の危険を確認しているでしょうが、富士山周辺は観光者も多い場所。避難が混乱することも考えられます。もちろん避難で優先されるのは最も危険な場所に住んでいる人、危険な場所にいる人です。パニックにならないよう、観光にいく場合もハザードマップなどを確認しておいたほうがいいでしょう。